猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

この答え、君には絶対教えてあげない

 

 

「宮廷魔術師殿、踏み切ったらしいな」

「ナニソレ」

「勇気をもって告白――だね」

 執務中の彼女は、思わずペンを取り落した。

「近衛騎士殿?」

「あ、イヤ。何でもないです」

 

 と宮廷魔術師が勢いよく、執務室に乱入してきた。

 

「陛下から認可もらいました。手続きを頼みますね。魔術師枠増大で」

 近衛騎士の彼女は目をパチクリさせた。

 

 

 宮廷魔術師は、さも可笑しそうに破顔する。

「私が陛下に告白? ナイナイ」

 取り繕った嘘。スラリと言えた。陛下からはとっくに答えをもらっている。

 

――大切な子がいるから応えられない。

 

(その答えを知ってなお、諦めていない私も往生際が悪いけどね)

 

 でも親友。君には絶対教えてあげない。

 

 

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第77回Twitter 300字SS参加作品

テーマ「答える」でした。

イメージ的に、コレしか書けなかった。

いつもの陛下と近衛騎士の彼女のイメージが強くて。

 

とりあえず参加できた。それで良し、ということで。

今回もありがとうございました!

また会う日まで

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「おまたせしましたね」
 鈴が響くような声で、翠の魔女が声をあげる。


「それじゃあ、お茶の時間にしましょう」

 指でパチンと弾く。置かれた箱から自動で、曲を紡ぐ。楽しげで。でも煩くない、忘れられた時代の音楽を。円盤一枚で、こんな音楽を再生できるのだから、古の技術は素晴らしい。――ただ、感動にまでは至らない。

 蒼の魔女は感情を置き忘れてきた。

 ダージリンティーに口をつけながら、他の魔女の会話を聞く。本来は学術研究の場所だ。新たな魔術開発、古代遺産の解明、再利用の道筋、薬学データベースの構築などなど、魔女にはやるべきことがたくさんある。
 あるのだが――。


「今日のゲスト。人狼族の侯爵、独身らしいわよ」
「今回はナイトウォーカーも出席するようよ」
「教授がくるの?」
「あ・た・り♪」
「「「きゃーー」」」


 魔女達が大興奮だ。


「それよりも本日の、メインイベントは、魔族よね」
「即位したって本当?」
「先代が崩御して、80年か。ちょっと長かったね」
「先代は戦争しか頭になかったからね。今代は、医療研究に力を入れているみたいね」
「闇の国は、連日パレードだってさ」
「今までも魔女に関心は示してくれていたけど、即位した魔王が直々に魔女の茶会(ティー・パーティー)に参加ってスゴくない?」
「前代未聞よ、本当。そええだけ私達の研究を評価してくれているってことだと思うけどね」


 今日も彼女らはテンションが高い。


 私は、それを聞きながら次の論文に頭を巡らせる。魔女は恋の話が好きだが、私はどうもついていけない。

 恋なんか、しなければ良かった。


 人間の男の子だった。

 茶色の髪に、青い瞳。何ら他の人間と代わり映えのしない、特徴のなさ。でも私は、あの青い瞳で見つめられる瞬間が好きだった。

 魔女と、人間では時間の流れが違う。だから、思いを遂げられるとは思っていなかった。

 たった、三ヶ月。蒼の魔女の屋敷で暮らし――。彼は人間の街に戻っていった。


 また戻ってくるよ、魔女さん。そう彼は囁いて。

 貴方と私じゃ、時間の流れが違う。
 だから過度な期待はしない。

 時はあっさり流れて、80年。
 あの時の恋心は、空想の宝箱に押し込めた。


 私は、もう恋なんかしない。

 

■■■

 

「あ……え……うそ?」

 私は目をパチクリさせた。魔族の象徴である漆黒のガウンを身に纏い。例のナイトウォーカー――吸血鬼と人狼族を従えた魔王陛下。その兵科が片膝をつく。


(え?)

 そして私の手を取り、流麗にその甲に口吻をする。


「陛下の前で落ち着きがないのも、まぁ納得だけど。ちょっと落ち着いたら? 蒼の魔女?」


 翠の魔女にそういわれるが、その言葉はまるで頭に入らなくて。
 それはそうだ。悪戯心いっぱいの笑顔で、陛下は微笑むから。


「戻ってきたよ、魔女さん」


 青い瞳で覗き込んで。陛下はそう言った。人間が魔女さんと同じ寿命を得ようと思ったら、悪魔に魂を売り渡すか、悪魔の魂を貪るしかないから、ね。そう彼は微笑んで。あの時と何ら変わらない笑顔で。

 論理的に考えれば、自明の理。
 彼は悪魔の魂を貪って――先代、魔族の王を貪って、命を得たのだ。


「起きるのに80年もかかっちゃった。ごめんね、魔女さん」

 微笑んで、それから彼は耳元で私の名前を囁く。
 彼が勝手につけた名前。私と彼しか知らない名前。空想の宝箱に押し込んだ、その名前を――。

 

 

 私は体裁も論理も殴り捨てて、彼の胸に飛び込んでいた。

 

 

 

 

________________

 

6/26 2代目フリーワンライ企画 参加作品

【お題】

■空想の宝箱
■自明
■落ち着きがない
■悪戯心
■お茶の時間にしましょう

 

一応、お題は全て使用しました。
今回は参加できてよかった!

 

 

 

カクヨムで「君がいるから呼吸ができる」にレビューをいただきました!

このエントリーはカクヨムの近況報告を

一部編集してます。

 

 

カクヨムノベルアップ小説家になろうで連載中の 
「君がいるから呼吸ができる」
カクヨムで初レビューいただきました!
(各サイトでも初です!)

 

kakuyomu.jp





レビューって、やっぱり嬉しいですね。
それから応援のハートをくださった皆様、本当にありがとうございます。

今回、連載としては「夏休み」以来の純粋な恋愛小説なんです。
やっぱり、恋愛の人が人を思うその純粋な関係が好きだなぁと改めて思うのですが。

今回の君がいるから呼吸ができるは、
基本、三人称フェチの僕が一人称にチャレンジ。
ただ基本的には三人称視点を描きたいので、
基本、冬希という主人公視点でありながら、様々な視点からの群像劇を書いてみたくなったんですね。

その結果、今日書いている時点で最新話が
20 君は幼馴染に向き合う
ですが。

うん、進まない(笑)

でも、それぞれの視点をめぐりながら、
ポップでありながらミクスチャーな視点を書いていけたらと思うわけで。

だからシンプルじゃない。
そこは書き手である僕も、重々承知していて。

シンプルに僕と君の関係性
あるいは際立ったキャラ立ち
あるいは、スクールカースト、格差、ボッチ
そこらへんのキーワードが近年は好まれていることも、最近、読み漁っているので、そこも理解してますが。

いや、そもそも僕の文章力が低いですけどね。
そりゃ、分かってます。

でも視点を絡み合わせながら。
ちょっとずつ、冬希と雪姫が前進をしていけたらと思います。
だから僕の中ではプロローグの立ち位置が、かなり重要で。
プロローグに物語が回帰していけたらと思っていたので、
すごく、音無雪様からいただいた、今回のレビューが本当に嬉しい。


もうひとつ。
僕は過去に「夏休み」という作品で、幼馴染モノを書きました。
だけど、冬希も雪姫も幼馴染じゃありません。
それぞれに、幼馴染がいます。

今回の「君がいるから呼吸ができる」は
幼馴染系の作品
と言うよりは、自分自身が書いた「夏休み」へのアンチテーゼです。

一応、プロットは作っていますが、
尾岡作品は登場人物が暴れだすので、
何とも言えない(笑)

でもイメージしているラストは今回あって。
だから、書いていて。本当に楽しい。

自分が描く世界を皆さんにお届けできて、
そてレビューも勿論ですがハートや
PVを見ていても、触れていただいている人がいる。

この点はTwitterでも触れましたけど。

 



これは本当に幸せで。
本当にありがとうございます。

社会人で、それなりに抱えているものがあって、
この「君呼吸」連載前は
本当に書けなくて。
本当は、もうネット小説書きを引退した方が良いかしら、と思っていたことがありました。

でもやっぱり、書いて表現することが、本当に楽しいので。
自分の思い想いの、物語を。
これからも無理なく書いていきたいと思います。


皆さん、本当にありがとうございます。
心からの感謝をこめて。


尾岡れきでした。

 

 

追伸。

「夏休み」は小説家になろうカクヨムで掲載。

今夏、ノベルアップにも転載しようと思います。

ある程度、構成しているのは現段階ではカクヨム版と思います。

 

確かカクヨム版に合わせて

先行公開したなろう版も修正した気がしますが、自信がない(笑)

 

ちなみに、「君がいるから呼吸ができる」の

弥生先生は

「夏休み」で

旧姓、辻弥生で登場します。

 

お粗末。

 

 

キスの日SS「先約」

 

「今日はキスなんだって」
「そんな相手、いないじゃん」
「お互いなぁ」
 クラスの女子がワイワイするのを、ひなたは漫然と聞いていた。いつも何からの記念日があって、みんなそれを話題に、騒いでいる気がする。
 キスの日か……。
 つい思ってしまう。当然、自分にはそんな相手はいなくて。でも、と思う。
 たった一人、思い浮かべてしまう人がいて。
「ひなた、どうした?」
 ニッコリ笑って、爽が言う。ひなたは、思わず首を横にブルンブルン振った。
「そうそう、知ってる?」
「え?」
 ひなたは、思わず爽を見る。それより早く、爽がひいなたの耳元で囁く。
「今日はキスの日なんだって」
「それは、あ、さっき――」
 触れるか。触れないか。内緒話のフリをしながら――。
 爽の唇が、ひなたの頬に触れて。
「へ?」
 そう思った時には、もう爽は離れていた。
 そっと、その頬に手を触れながら。
「先約」
「え?」
「キスの日に便乗して、そういうことするヤツ、いそうでしょ?」
「そんなこと、する人いないし……」
「なら、俺の独占だね」
 ニッコリ爽は笑う。ひなたは、自分でどう処理していいか分からず、俯くことしかできなかった。

 


(((誰も、そんなことできないからー!)))

 この一瞬、これまでに無いほどクラスが一致団結した。

 

 

 

 

________________

 

5/23はキスの負に便乗して。

リハビリも兼ねて。

限りなく水色に近い緋色から

ひなた × 爽です。

 

なんか連載、再開できそうな雰囲気ね。こっちも頑張りたくなってきた。

あ、ちなみに。

これは爽だから許される話で。

意中の子に、いきなりキスしたらいけませんよー(当たり前

「君がいるから呼吸ができる」の更新を開始しました!

恋愛/青春/学園でタグを設定しています。あと、糖度過多(笑)

「君がいるから呼吸ができる」

連載スタートして(突破通的に思いついた)

現在、7話まで。

 

はい、あらすじ。

登校拒否をしていた子にプリントを持っていったのがすべてのはじまり。
大勢の人の前では過呼吸になってしまう下河雪姫と。特に交友関係もなく時間を持て余していた俺、上川冬希。次第にお互いが大切な存在になっていって――。
糖度120%。純愛イチャイチャ展開で青春を突き抜ける

これだけは言わせて欲しいの。

 私ね。
 ――君がいるから、呼吸ができたんだよ?

 

ノベルアップ様、小説家になろう様で細々と更新中。今日、追ってカクヨム様でもはじめてみました。コレ以上は広げないつもりです。

 

novelup.plus

 

小説家になろう | 君がいるから呼吸ができる

 

kakuyomu.jp

 

 

お好きなサイトでお読みいただけたらと思うのですが、

ちょっとこれだけご報告。

 

 

 

 

まさかのですよ。

日刊ランキングですので。

また変動していくのは分かっているのですが。

それでも、ジャンル別 恋愛/ラブコメで1位

総合で6位。

 

泡吹いた。
2021.4.17は記念日や(笑)

 

 

あまりランキングはこれまで意識してなかったのですが、

これは嬉しい。

でも熱く応援して下ったフォロワー様、読者様のかげで。

それはもう間違いない。

 

 

だから、ご報告と言うよりも

本当に皆さん、応援してくださって

ありがとうございます。

 

ここのところ、

いや、ここ数年かしら。

小説が上手く書けないなぁって実感があって。

それでも300字SSや連載「限りなく水色に近い緋色」は続けて。

筆を折ることだけはやめよう。

好きだから。なんとか続けていこう。

そう思ってきました。

 

今回、好きなものを好きなように書くというスタンスで。

プロットもクソもなく。

simple noteになぐり書きして、

以前楽しんで書いていたように書き出したら

これが楽しくて。

 

クオリティーがともなえば、

それは言うことが無いけれど。

 

でも、自分の好きな世界を

自分の好きなように書く。

 

これって本当に大事なんだなぁって思います。

結果、読者様と「スキ」をシェアできたのかなぁと。

 

この物語はまだ始まったばかりで。

設定したタグをまた全て回収できていないのですが。

自分ペースでまた書いていきたいと思います。

 

 

ますは、応援くださった皆様、

一文でも読んでくださった皆様、

 

本当に、ほんとうに。

本当に。

 

ありがとうございました!

君と夢を見ていた。

 ぐちゃぐちゃの机の上で

 また、か。
 半ば呆れながら、徹夜で作業するのは仕方ない。もうコレは諦めた。どうせ姐御は、言っても聞かないし、思いついたが吉日で研究に没頭する。僕は、姐御の研究が心置きなく行えるよう金策をして――そして、商品を売り出す。
 鳴り止まない目覚まし時計を止めて。
 どうせ、こんなモノじゃ姐御は起きない。
 彼女の唇に、自分の唇を重ねて。
 彼女の甘い吐息。本能的に、彼女の唇が僕を探し求めるが――僕はそっと離れる。
 コーヒー豆をミルでゆっくりと曳きながら。
 仄かな香りが立ち込めて。
 自然と、彼女が起き上がるのを待つ。
「ここまで来るなんて正直、思ってなかったよね」
 僕は一人コーヒーを啜りながら、呟く。
 ここまできたのだ。
 竜の鱗、その力を借りて。
 人類が空を飛ぶ。
 ――なんだ、そのため息は。
 彼女の話を聞いたあの時の僕を、誰が責められようか。みんなきっと同じ反応をするはずだ。大それた夢、そう言える。それでも彼女は言い切ったのだ。今は夢でも、いずれ現実になる。お前はずっとポーションを売り続けるか? それとも人類に夢を売り出すか? どっちか選んでみないか?
 なんて人だ、と思いながら。けれど――。
 さすがの彼女も今回は驚くだろう。
 イメージトレーニングをしておく。つい、ニヤニヤしてしまいそうだから。

 

「王国騎士団が空軍設立を創案。その船を全面的に姐御に委託するそうです。報告は以上です――」
 だ、ダメだ。ニヤけた表情筋がおさまらない。
 夢を見ていた。
 人を空に羽ばたかせる、そんな夢を。

 コーヒーの香りに満たされながら。
 彼女はまだ起きない。
 それで良い。起きるまでもう少し――その寝顔が観れるのも僕の特権だ。

 

 

 

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第155回 二代目フリーワンライ企画参加作品。

お題:

「鳴り止まない目覚まし時計」

「机の上はぐちゃぐちゃ」

「大それた夢」

「なんだそのため息は」

「報告は以上です」

 

多分、全てのお題をいれたんじゃないでしょうか。

今回は参加できて良かったです。