猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

新世界/君のご飯が食べたい

【新世界】

 

 だいたい目立ちすぎるんだ。
 君に苦言を言われるまで、考えもしなかった。それなりに変装をしていたつもりだったが、君曰く、絹を纏う町人がいてたまるか、らしい。
 君にコーディネートをしてもらって、町に出る。
 王族なんて不便なもので、市井に出ようと思えば、護衛が壁をご丁寧に作ってくれるから、結局何も分からない。
「また難しい顔してるね」
 と彼女は野生竜の串焼きを手にする。ナイフとフォークが無い事に戸惑うと、
「こうやって食べるの」
 とかぶりつくので、それにならった。
 ――美味しい。
 自分の知らない世界が、すぐ近くに広がっていて。もっと知りたいと思う事は贅沢なんだろうか。この国のことと、君のことを――。

 

 

 

君のご飯が食べたい】 

 

 今時ね、男の人だって、ご飯を作れた方がいいと思うよ。

 そう君が言っていたことを、今さら思い出す。

 君の料理が一番美味しいからね、と僕は笑った。夫婦は共同作業だから、私だけ料理をするのはオカシイと言うので、僕もしぶしぶ料理を憶えた。

 惚れた弱みってヤツだった。

 不器用ながら、君のレシピを少しずつ憶えていったんだ。

 

 

「美味しいです」

 君は言った。

「どなたか、存じませんが」

 よかった、と僕は答える。懐かしい感じがしますと君が言う。それだけで充分。君に教えてもらった煮魚だ。できれば、もっと早く作ってあげたらよかった。

 ――君が僕を忘れてしまう、その前に。

「おいしい」

 その言葉があるから、次も頑張れる。

 

 

 

 

ということで、今回は2編参加です。

いつもの、王子と騎士な女の子と

ぷらすオリジナル。

まぁ、月並みですが。ちょっと僕はそういう仕事をしているので、

つい書きたくなってしまったのでした。

 

ちらっと読みましたが、他の方の作品も

世界が深く、のめり込む。

 

最近はなかなか読了ツイートすら残せていないのですが

隙間時間で、また楽しませていただけたらと思います。

「精霊の守り人」を読んだよ!

 精霊の守人を読んだよ! 

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

 

 

娘に勧められての児童文学です。
児童文学スキーなのですが、
上橋菜穂子さんは、なぜか読まぬまま経過していて。
相方さんが、多分、娘さんが2~3歳の時に読んでいたのではないかと記憶しています。

当時の僕は「面白そうだね」と素通りをしていましたが、
あれよあれよと映像化されて
「ふーん」と本の食わず嫌い選手権を自負している僕は後で後悔することになるのですが、
まさしうその通りでした。

本書は長い序章で
多分、いろいろな伏線が散りばめられていると思うのです。

そんな精霊の守人です。

あらすじ。【amzon.co.jpより引用】

100年に一度卵を産む精霊〈水の守り手ニュンガ・ロ・イム〉に卵を産みつけられ、〈精霊の守り人〉としての運命を背負わされた新ヨゴ皇国の第二王子チャグム。母妃からチャグムを託された女用心棒バルサは、チャグムに憑いたモノを疎ましく思う父王と、チャグムの身体の中にある卵を食らおうと狙う幻獣ラルンガ、ふたつの死の手から彼を守って逃げることになるのだが……

 

そして、おいらのブクログレビュー。

娘に勧めてもらって、読みました!
ずっと上橋菜穂子さんが気になっていて、相方さんが長女が2~3歳の頃に読んでいた記憶があって、食わず嫌いならぬ、読まず嫌いのまま経過したのですが、いざ娘に読ませてもらって、一気にのめり込んでしまいました。
(みんなが読んでいたら敬遠してしまう悪い傾向にあり。みんなが読んでいるということは、良作、傑作である可能性があるのにね。
こりゃ、読むべきです。これから2巻を読むのですが、1巻は始まりであり、これから始まる広大な世界の空気に、すでに触れてしまって、物語に酔ってしまったから、もう取り返しはつかない。物語を見届けにいきますとも。

 

 そんなハイテンションでお送りしましたが、さてここから少し熟考。



どうしようもない運命に翻弄されるチャグムに、子供たちはやはり焦点がいくんだろうか。でも僕は読んでいて、バルサとタンダの、戻れない関係、かなえられない甘い夢を見ながら、それでも前進しかできない不器用な大人たち、そこに感情移入をしてしまう。

バルサの視点は、まるっきりお母さんだし。
タンダの包容力は、ほとんどお父さんで。

タンダなんかさ、淡い初恋の時代を瞼の裏でいつも見ていて。
でもバルサが見ているのはチャグムを含む「今」なんだろうなぁ、と思ってしまって。
このすれ違いが、なんとも切なく感じてしまう。
でも甘い事なんて言えなくて。
だって、今、動かないと大地は枯れて、
人が死ぬ。
その役目を押しつけられたチャグムは苦悶していて
オトナの勝手な思いを子供に追しつけることができるわけもないんだよね。

でもチャグム自身、この1巻では抗いながら
運命を受け入れる選択をして
葛藤しながら、受け止めて
守られるだけの存在じゃないことを示したけど
それでも次に、それ以外の回答は許されない選択を迫られて。

でもね、守られるだけの時が終わって
有無を言わさない選択をしないといけないときがあって
それは突然やってきて。

そういう意味で、オトナって、オトナになるって
本当に面倒くさい生き物だな、って自分自身でも思うのです。

多分こういう視点って
児童文学を読むとき
娘の視点、息子の視点と
オナナな僕の視点って絶対違って

今、彼女はどんな想いで
物語にトリップしているのか
そういう意味でも気になりながら、僕も2巻にトリップしていきたいなと思います。

魔法をかけるなら、秋が良い

 魔法を一つかけるのにも手順は重要だ。正確な呪文、正確な陣、手入れされた法具、厳選された供物、そして清涼な空気のある場所が必要で。
 雨を降らせる、それだけでも魔力と接続するには細心の注意が必要で。下手をすればその力が逆流して、術者の魔力を根こそぎ奪ってしまう。
 まして、魔法で人を殺めるとなればなおさら。
 神術使いの最高峰、銀巫女と言われた子は無邪気に微笑む。俺が黒魔術士であるとは微塵にも思わないと言わんばかりの警戒心の無さで。
 彼女は魔法陣に足を踏み入れた。
 秋は静謐な空気が流れる。黄昏時、まさに魔力が強く高まるこの刹那に――。
「一目惚れって、信じます?」
 魔法をかけられたのは――多分、俺で。

 

 

 

 

恒例のtwitter300字SS参加作品です。

今回は「秋」

直接「秋」という単語を出してしまって、季節の空気感とか出せなくてちょっと消化不良ですが、タイトルが無造作に思いついて。書き切ったら、今は満足してます。

 

さて、他の方の珠玉な秋を満喫しますかね。

Hello,good by

 

 こんなにすり減らして、動いたところで何もできない、変わらない。足を引きずる。仕方ないじゃないか、そう言い聞かせて。
 帰って、ご飯を食べて、そして眠るだけ。コンビニが、冷蔵庫がわりだ。今日もビールとつまみを買って――。
「先生、遅かったねー?」
 かちゃん。缶ビールが落ちる。煮物の匂いが充満して。目をこすると、そこには誰もいなかった。
 生徒が土砂災害で流された。遺体は見つからず。
 近所の人とスコップを振って、泥に足を取られて、帰って眠るだけ。そんな毎日をくり返していたのに――。
 食欲をそそる匂いに誘われて、涙が出る。
 土砂の中で――今日、君を見つけたのは偶然じゃない。

 

 

 

 

 

仕事多忙で休筆していましたが、

参加も無理かと思っていましたが、

なんとか、荒削りながら書けたので

まぁ、今しか書けないかなぁ、と思って。

 

時間があれば、皆さんの作品も堪能したい。

やっぱり300字SSは楽しいのです。

豪雨が落ち着いて、これからが本番なのよ

おやじの会のパパさんが声をかけてくれて

駅周辺の泥撤去作業に行ってきました。

衣服の汚れは名誉の勲章ですよ!

 

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しかし泥は重い。シャレになってなかった。
こんな泥が、流れてきたらそれは車も流されるよね、ってレベルで。

 

幸い、僕の町内会は被害には合わなかったけど、
同じ学区に住む人間としてはね、
自分は被害に合わなかったから関係ない、とは言えないよねー。

 

つながるということは大事だと思います。
4年前にも土砂災害があったのにね。

 

「輪番制ですかね?」
ヤメて、それは本当にマジ、やめて!

 

全国的に被害が広がっているのは、ニュースが報道している通りです。
NHK生活防災アカウントさんが、こんなツイートを流されておりました。

 

 

地盤が緩んだ状態が続いていると思うので、
どの地域でも、本当にお気をつけて!

地球ゴージャス「ゼロトピア」を観てきた!


岸谷五朗さん、寺脇康文さんプロデュース、地球ゴージャスの公演を観てきました!

www.chikyu-gorgeous.jp

 

久々の、ある意味では正当な舞台は何年振り? って感じですが、ワクワクして観てきました。

 

あらすじ、公式から。

 

大きな大きな船が沈んだ……

生き残った人間たちが辿り着いたその島は

地図にない……色彩もない……島だった。

 

 


公式には、もっと長く、詳細なあらすじが載っています。が、観たいからと行って観ようにも、次は大阪公演で、チケット取得は熾烈を極めていると思うので。まぁ、あえて、詳細にはのせますまい。


キャストも豪華で、西川貴教さん(T.M.Revolution)の出演も見所。
DVDやブルーレイでの販売もあると思うのですが、空気がね。やはり演劇は空気だと思うわけです。
劇場の空気、役者さんとの距離の近さ、そしてカーテンコールでの垣根のなさ。
プロの演劇を、本当に久々に見たのでもう大興奮だったのですが。


と、興奮しているだけではダメだと思うので、
少し演劇考を。

 

ゼロトピアは岸谷五朗さんの造語だそうです。
ユートピアデストピア


どちらかと言うと、重苦しい感情のルツボは
デストピアにこそふさわしくて。

 

色のない島。
これこそ、演劇ならでは、ですね。
アニメーションとしても成立しそうですけど、
これを演劇の中で、岩肌や枯れた草木で演出したからこそ

 

なんて言うか、希望が眩しかった。

 

寺脇さんを見ていて
そして岸谷さんを見ていて思ったのは
相反する立ち位置の二人ですよ。
その二人が掛け合いをした瞬間に

 

デストピアだった舞台をユートピアに変えてしまうんだから
飲まれてしまうこと必至で。

 

これ他の日にはどんな風に演じているんだろうか、とか
計算しつくされた演出の中で
余裕のある遊び心を感じてしまうのでした。

 

他の日も観たい。
違う場所で観たい。
でもチケット争奪戦、他の地域ではソールドアウトですものねぇ。

 

僕らの地域では当日券が販売されていたという意味では
もっと、この芳醇な贅沢な時間というものを知ってほしいと思います。


物書き視点としては、少し脚本への所々の矛盾とか
近未来SF的な世界とか
本当に描くのが難しい世界で。

 

役者さんのエネルギーと
舞台美術が織り上げた、世界の美しさで。

 

人を憎んだり
恨んだり
そんなことなんか
ありませんって
言い切る

 

寺脇康文さんと、
それを言わせる岸谷五朗さん。

なんてステキなんでしょう。
本当に素敵な舞台でした。

 

入力するツール


ポメラが欲しい、ポメラが欲しいを連呼しては、お手伝いにいつにも増して励むオカザキさんです。
みなさん、ハッピー、日曜日?


さて、端末を入力する感覚ってすごく大事だと僕は思っていて。それぞれに良し悪しがあるんですけどね。
例えば愛機のMacBook Pro。(2016、touch bar搭載モデル)
僕の使用頻度で行けばMacBookで全然良かったのですが、MacBookは第1世代バタフライキーボードですが、MacBook Proは第2世代。ネットの評価でもMacBook Proの方がキータッチ感が上とのことで、こちらを購入したのですが、流石というか、なかなか個性的なキーボード。

薄く、軽いタッチで入力が可能で、このキーボードのおかげでソフトタッチすることを覚えたのでしたが。
しかし、これは僕だけかもしれませんが、
疲れているときはミスタイプが多いと感じるヤツでもありまして。
なかなかデリケートであります。
ただ、Macはライブ変換という機能があって(入力しているところから、自動的に変換をしてくれて)
これが、時に物語に集中したい時には、非常にスムーズなのでした。

もう一つ、僕は隙間時間で、iPhoneで書くことがあるのですが、
iosの予測変換は、なかなかバカにできません。
携帯の予測変換は、時としてスムーズ。フリック入力も、ある程度、頭の中で組み立てた文章なら本当に早く入力できると思います。

だけど、物理キーボードにかなわない、と思うのは事実で。

ネットでのレビューを見ると、ポメラのキーボードに愛を感じられている方も結構多い。
そこらへんを思いながら、購入欲を募らせつつ、オカザキは今日もお手伝いをするのです。
(オカザキ家、ただいまお父さんを含めて、お手伝い貢献度によるおこづかい制です)

文章を、テキストを、物語を書くことに
本来、道具なんか関係ないと思いながら、
道具を追い求めちゃうのは、ね。

本当の意味でのテキスト書きではないのかもしれないと思いながら。
呼吸するように、言葉を書きなぐっていた時期もあったなぁ、と。