猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

娘さんが小学校を卒業したのだ!

 

 

表題通り。
6年間って長いようで短かったと思うわけで。
この6年間に彼女は確かに成長したなぁと思うけど、
僕は成長できたのかな、と思うんだけれど
まぁ、成長できたんだろう。そう思うことにします。

さすがに6年生にもなると
男親に対しての自立だったりとか、
色々あるんだろうと想像していたのですが、
今のところは、まだそれが無い様子。

彼女は中学校になったら、演劇部に入りたいと仰りますので
(僕が高校時代、演劇部。結婚する前まで、社会人アマ劇団に所属していました)
別に僕の道を追いかけているわけではないでしょうが、
そんなことを、言っています。

僕が6年生卒業時点のことを思うと、
彼女は考え方がオトナだなと思います。

漠然とでも将来のことを考え、
将来の仕事に役立つだろうと、
演劇もしたいという想いをもちながら。

これからも全ての共有はできないだろうけれど、
できるだけ、君がやりたいと思っていることや、
挑戦したいと思うことに協力ができたら、と思うし
君に負けないクリエイターで、モノカキでありたいと僕自身は少し思うわけです。

ただ、イヤなことは後回しにしないほうが良いと思うし、
ストレートに話をすることが全てでは無いと思うのだよ。

 

とりあえずは、卒業おめでとう。
あぁ、ボチボチいこう。
小学校や区の図書館の本、読みたいものは読み尽くしたと豪語する君ですが、
舐めるな。
本との出会いも、それ以外の出会いも
まだまだ始まっていないんだからね。

 

悲しくない/雨フラシ

【悲しくない】

 悲しい言葉なら慣れている。いちいち反応する必要なんかない。ただ、この感情だけ抑えたらいい。昂ぶったら、その瞬間に誰かを傷つける。だから、我慢をしてきたし、人の言葉に無頓着に生きてきた。関わらなければ、最初から摩擦もない。
 ほんの少し感情が揺らいだら――火種が炎になって、溜め込んだ感情が破裂する。感情なんかとっくの昔に枯らしたと思ったのに。
 でも暖かい言葉には慣れていなかった。不覚にも。
 貴方は困った顔をする。私も困っている。でも止まらないのだ。この感情が。
 ――悲しいだけが、涙の意味じゃないからね。
 貴方は、またそんなことを言う。
 感情が止まらない。
 これは全部、貴方のせいなんだから。

 

 

【雨フラシ】

「放っておいて」
 絞り出すような声で、彼女は言う。雨が打ち付ける中、傘もささず立ち尽くす。
 親友と彼女は別れた。そりゃ男と女だ。僕の分からない事も色々あったと思うし、映画のようにハッピーエンドにはならない。それに僕には何もできない。
 せめて傘をさせたらと思うのだが、僕は傘をもつこともかなわない。
 初恋の君よ。僕は先に旅立ったが、未だ君に縛られてこの世から旅立てない。その手に触れて、君を慰められたらいいのに、僕にできることは雨を降らすことぐらいで。
 こんなに近くにいるし、昔から想いも変わらないのに。
 ねぇ君。
 雨で涙をそそぐくらいしかできないけれど――君が幸せになるその日まで、傍にいさせて?

 

 

 

 

 

第51回Twitter300字SS参加作品

テーマ「涙」でした。

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと余談。

実は「悲しくない」の方はベースは、拙作「限りなく水色に近い緋色」でした。でも、その作品の背景を匂わせないように、できるだけ書くというのが、殴り描き時のテーマでした(笑)

 

「雨フラシ」は完全オリジナル。涙を隠す雨ってのをテーマに書いて見たいと思ったんだけど、どうかしら? とか思いながら。

 

今回も参加ができました。ありがとうございました。

 

最初は誰もが不安なんだってこと

 

たまにお仕事の話しを。
僕はリアルではケアマネジャーなので、この仕事でしか体験できないこと、学習できないことがあると想い、たまに備忘録で書いてみようかと思うわけです。

 

今回は、新規の利用者さん宅へ訪問をしました。
毎回、なかなかない経験をさせてもらうのですが、今回もショッキングでした。
初回訪問に向けて、電話連絡をさせてもらうのですが、その際の一言。

 

「ケアマネ歴は何年なの?」
今年で4年目になる僕です。


「浅いわね。もっとベテランはいないの?」
お、おおぉ?
ちょっと目が点になったけど、冷静にお話を聞いていく。

 

「ケアマネになる前にもっていた資格は?」
僕は基礎職が介護福祉士ですので、そのように答える。
社会福祉士じゃないのね。やっぱり専門的な人と言えば、社会福祉士さんじゃない?」


ちょっと、ここで沸騰しそうになる。
僕もケアマネ5年目には、社会福祉士取得に向けて動き出そうとは思っていました。
しかし、あまりに介護福祉士を下に見る発言。どちらも、国家資格だっつーの、とは思うが、そのまま傾聴していく。

 

本人の状態、家族が大変に思っていること、介護保険制度でできること、できないこと。そのことについて、訪問させて説明させて頂きたいことを伝える。

 

「いいわ。あなたが、適任か面接をしましょう」
心の中で、僕が沸騰である。
ちょっと、その言い方はないと思う。

 

「医者を選ぶことで人生が変わるでしょ。ケアマネ選びも重要だと思うの」
ここで、僕はふと深呼吸をする。この物言い。もしかしたら、この人はこの業界――もしかしたら看護師経験があるのかもしれない。
事前情報に、利用者本人を呼ぼうの為、外出に連れ出すも限界を感じているとあった。
この方は、献身的に介護をしているのかもしれない。

僕のスイッチは、この段階で完全に切り替わった。

 

「ひどいことばかりズケズケ言ってごめんさいね」
僕はストレートに言ってもらえる方がむしろ助かる、と伝えた。
助かる、なんてあるものか。ケアマネだって人間なのだ。
でも、この時は「助かる」と言わないといけない。
この人が望んでいるのは、社交辞令なんかじゃない、介護の現場こその本音と――真摯なさポートなんだと思う。

 

「私、リハビリが必要だと思っているの。でもどう利用していいか分からなくて」
「怖いおばさんだけど、勇気を出して来てね」

 

大丈夫。真剣勝負を始めよう。
あなたが、介護に対してまっすぐに取り組んでいることがわかったし、誰よりもご主人を大切に思っているのも分かった。
オッケー。
僕は繰り返し、自分の中で言う。

 

ストレートに言ってもらった方が、僕は助かるので。この仕事をしていると、きれい事では済まされない現実があって。ケアマネはそのことを伝えないと行けない時がある。
だから、そのことを僕はストレートに、柔和に返す。

 

「いいわ、面接をしましょう」
面接ですか……?
戸惑いは、言葉に出さないように飲み込む。笑顔で、よろしくおねがいします、と言って。

 

 

 

 

 

 

と、かなり電話での洗礼を受けたのでしたが、
結果、初回訪問では受け入れてもらったようでした。

 

介護保険の説明、できること・できないこと、
なにより介護保険のサービスでは全てを支えるkとができないので
本人さんの今できること、できいていること
家族さんのサポートが何より重要であることを伝え、
今、家族さんが外出や旅行に連れていってあげたりと、とても良いことをしているとお伝えしたのでした。

 

ケアマネジャーとの契約をしてもらい、地域のサービスや、現在の本人さんの状態についても確認をさせてもらい、サービス事業所の見学もしてみると、奥さん、非常にアグレッシブで電話とは打って変わって、今のところは受け入れてもらった印象があります。

 


思うのは、ご利用者、本人さんもそうですが
家族も、介護への不安が強いということ。
元気な時に本人を知っているからこそ、それはなおさらのことだと思います。

 

ケアマネジャーをはじめ、医療者・介護専門職の関わりで、その方の人生は一変してしまう。病気、もしかしたら認知症を抱えながら、その方が望む生活に近づけることおができるか。願わくば、現在の介護度から少しでも改善し、介護保険から卒業ができたら、と思います。

 

いつも、初回訪問、初回アセスメントはパワーがいる。
今回も、本当にステキな経験をさせてもらったと思います。
支援は、関わりはこれからなので、
その時でできる僕の精一杯で支援ができたらと。

 

これから結成するケアチームと(関わるサービス事業所も、家族も主治医も)
膝をつき合わせて、関わっていく日々がまた始まるのです。

 

やろうぜ!

 

 

慟哭

 あの人はきっと私が死んでも涙を流さない。
 感情を流すには、私たちは長く生きすぎた。エルフと龍人、ともに長命の種だ。エルフは自然と共にあり、龍人は本能のままに血を求める。
 惹かれたのは――きっとお互いの同情から。
 彼は失ってばかりで。そして私は奪われて。
 種が違うんだから、愛情なんかあるはずもなく。
 エルフが命を絶つには、汚れた血で煎じれば良い。どんな薬を調合するよりも、安易で。私は一想いに呷った。
 でも、君に会えてよかったと思っているんだよ?

 

 

 慟哭という言葉があるのなら、今がまさにそれで。
 龍人は枯れかけたエルフの躰を抱きしめるが――血で汚れたエルフは、土にも還らず気化して、消え去った。

 

 

 

 

 

twitter300字SS参加作品。

298文字でした。

そんな薬があれば

 シャープペンシルで文字を綴りながら、ひなたはチラッと爽を見やる。
「人見知りをしない薬があればいいのにね」
 そうひなたは言う。一部の人に対して素直になれるのに、それ以外では言葉にならない。その一方で、目の前の爽にならこうも素直になれる。
 と爽が笑っていた。
「え?」
「そんな薬があってもなくてもひなたは、ひなたじゃない?」
「え、でも、それじゃ――」
「それに、そんな薬があったら俺が困る」
「え?」
「周りがほっとかないじゃん。俺はひなたを独占したいのにね」

 


 ――爽、お前はもう少し人見知れ!
 一緒に勉強しながら涼太は聞こえない振りをする。そんな薬があれば、言葉を紡ぐことをきっと迷わないのに――。

 

 

 

 

Twitter300字SS参加作品。

296文字でした。

アウトプットすることの大切さ

最近、書くことが楽しいなと思えて来たので、そんな話を。

 

いや、単純な話ではあります。
書かないことを平常化させてくると
書かないことが当たり前なんだと
理由にしたり。

 

最近、インプットすることに躍起になっていたのですが(主に読書で)

楽しみながら読書していた反面、どうもココロ踊らない僕がいまして。

 

これってなんだろうなぁ、と思いながら悶々としてたのですが、多分、それって表現したいのに表現できない、そのパワーがない自分なんだろうなぁ、と思ったり。

 

僕の悪いクセで、書けないことを理由付けするのが多いと思うのですが。

書けないこと、書かないことを正当化する前に、ちょっと書いてみるだけで、少し違う感触に出会える気がしまして。

 

そういえば昔は、もう少しネットで、日記を書いていたなぁ、と思うわけで。

 

いつの頃か、ブログで日記を書くのなら、それより先に新作を書いた方がいいじゃないかとも思っていましたが。

 

結局ね、バランスの取り方次第で書けるものは違ってきて。言い訳や理由ばかりなぞっていたら、見えるものも見えなくなる気がします。

 

アウトプットもインプットも大事だと思うのですが。

結局、書きたいものを書く。

書きたいやうに書く。

その直感とか直情とか。

本能にシンプルに従うことも大事だな、と思うわけで。

 

 

言い訳しちゃいます。

言い訳することを言い訳にして。

 

そんなロジックで自分を守るより、

書きたい時に、

書きたいように書き殴る。

この感覚でいたいなぁ、と思うのです。

 

そんなに難しい話しじゃなくて。

ほんのシンプルで、

何気ない、

すごく当たり前のことなんだと。

 

書きたいように書き殴りたい。

結局はそれなんだなぁ、と。

虚空の旅人を読んだ!

上橋菜穂子先生の精霊の守人シリーズ・第4作でございます。
夢中になると、とことん読みたいのですが、仕事の課題をしていたりすると
なかなか読めなかったのですが、今回も読めて満足でした。

では、お品書き。

 

 

 

 

1 あらすじ


Amazonより引用》

新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが、シュガとともに向かったのは、ヤルターシ海のサンガル王国だった。新王の即位の儀に招かれたのだ。ところが、めでたいはずのお祝いの席で、新王は、傷つけられ、チャグムたちは、はからずも呪詛と陰謀の中に身を置くこととなる。

 


2 ブクログレビュー

 

《尾岡のブクログレビュー》

守り人シリーズ第4作目。にして旅人シリーズ1作目。チャグム王子視点の今作は、今までで一番のめり込んだかもしれない。
王族であること。駆け引き、外交。チャグム自身がある意味では目をそらしたいことが目白押しで。その中で、この世「サグ」と重なっているもう一つの世界、「ナユグ」を経験したチャグムが、もう一つ別の海「ナユーグル」に関わるのは必然かと。

情熱的で、血の気の多いタルサン王子をはじめ、三女サルーナと言い、バルサの出演は回想のみだけど、今まで以上に熱い物語で――。

解決ないまま、物語の幕は一応下りる。
やはり読み進めないとです!
今回も満足の1作でした!

booklog.jp

 


3 もうちょっと感想! one more!! 

 

ブクログレビューでは足りないことを含めて。
今作では、バルサもトロガイも出てこない。出てくるのは、チャグムと星読博士シュガの回想のみで。タンダに至っては、登場人物紹介からも出てこなくて。
チャグム、思い出してあげてー! と想ったのは内緒でございます(笑)


サグ(この世界)とナユグ(この世ならざる世界)を経験したチャグムが
今度は、ナユグールに誘われた(ナユグール・ライタの目)少女・エーシャナを巡り、サンガル王国にて新王即位ノ儀の中、否応なしに巻き込まれていくという――この物語展開はさすがでした。

 

ページをめくるのももどかしいくらいに、物語が矢継ぎ早に展開していくのでした。

 

今作で特に印象的なのが、熱血と言ってもいい第2王子、次男のタルサン王子と、チャグムの対比ではないかと思います。

 

己に、国に、そして島や海や兵に誇りを抱くタルサン王子。
逆に、世間知らずなまでに囲われて育ったチャグム。しかし精霊の守人で語られた、バルサ達の出会いが、為政者――王たる道を進むしか無いチャグムに、大きな成長を見せ。絹にくるまれた王子ではないことを印象づける、二人の接触は鳥肌ものです。

 

この作品でも、語り出せばキリがないほど、様々な魅力に溢れていますが、
まずはきらきラと輝く少年の王子の邂逅と、そこから衝突しながら結んでいく、青臭いまでの友情でしょうか。

 

星読博士シュガの気持ちが痛いほど分かります。
今作で、なんてオトナの情けないことか。
シュガは、チャグムを守るため、国の威信を守るため、苦心をします。
オトナならそうすると思う。

 

様々な陰謀、回避できない現実、建前。
オトナなら、安全な道を選ぶ。
まして政治の道、外交の道ならば、必要最低限の犠牲で役目を担えるならば、
犠牲を有効投資と考えるかもしれない。

 

でもね、チャグムは本作の中でこう言うんですよね。
これが、僕も本当に突き刺さる。

 

「おまえがなにか陰謀に気付いたとき、わたしをまもるためにその真相を決して隠すようなことはせぬと約束してくれ。……陰謀の存在を知りながら、だれかを見殺しにするようなことを、けっして、わたしにさせるな」

 


なんて力強く、意志がこめられて
かつ、青い言霊なんでしょうかと、僕は思ってしまいました。
おさない、という単語も、本編の中では何回か出てきます。

 

おさなく。
青く。
まっすぐで。

 

オトナは打算にまみれて勝負をしようとします。
まっすぐさだけでは、決して外交も仕事も社会も成立しないのです。

 

そんなことは宮廷という場所を知り尽くしたチャグムが誰よりも知っていて、
でも、ある意味では知らなくて。

 

その中で、本当の意味で知ることになる。
それが友を送り出した瞬間で。

 

チャグムが思った「虚空の旅人」の意味を
是非に一緒に、見届けて欲しい。

 

オトナの打算が思うとおりにいかないことが、
これほどに痛快とは。

 

真っ直ぐさを忘れると言うことは、
人を駒のようにしか見られないということなのかもしれません。


虚空の旅人になりたい。
今からでも遅くはないと、諦めない心を
チャグムとタルサン王子が、今回、教えてくれたのでした。