猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

婚約腕輪

これは契約なのだと言う。本堂の奥、床板が腐っていた場所に、その妖怪は眠っていた。衣一つまとわず――は思春期の男子高校生にはキツイ――まま納められていた彼女は、僕を見て笑った。

 

元服を迎えた武士(モノノフ)が、儂に欲情するか。まぁそれも一興」

 

そう呟いた声が契機だったのか、彼女の吐く吐息が、腕に巻きつく。

 

「な、何、これ?」

「生臭坊主の家系は、教えを一子相伝と聞いたが、ニンゲンの為す伝聞などその程度か」

 

ふむと頷く。い、意味がわからない……。

 

「疫で米も野菜もダメになった時代があってな。貴様の祖先は、儂に泣きついた。もともと、医の心得がある儂には造作無いことだった。その変わりに、供物を要求した」

 

「え? それって、人身御供?」

 

いわゆる生贄ってヤツじゃないかと、と唾を飲み込む。腕に巻きついた煙は腕輪となって、取れない。どう足掻いても、だ。これは観念するしかないのか、とから笑いしか出てこない。

 

「血は争えぬな。別に人間の血肉など、食ってもうまくはない。儂には興味がない事よ」

「え?」

「儂は優秀な子が欲しいだけ。生臭坊主は優秀な血はあったが、女にだらしなくてな。坊主が庄屋と不義密通とは、なんとも嘆かわしい事よ。血は良くとも、親がそれでは子は育たぬ」

 

「は、はぁ」

 

「故に、今日まで待った」

 

「へ?」

 

「坊――名はなんと?」

 

「え? 慶太だけど――」

 

「心音(ココロネ)が美しい。お主のような武士ならば、夫婦(メオト)となる事にも異議はなし。待ち続けた甲斐があったというもの――」

 

え? え? え?

この瞬間も、裸の少女は僕に距離を詰めてくる。

 

「ま、まって、待って! ちょっと話しあおう、色々ちょっと確認したいことが――」

「体で語ることも武士たる、か。一目惚れというものは信じていなかったが、この世に絶対は無い、ということか。天よ、閻魔よ。この出会いに感謝する」

「だから待って、ちょっと、待って、待って――」

 

 

 

 

 

 

この後、音を聞きつけた母が駆けつけて――さらに事態はややこしくなるのだけれど――兎に角、今はもうそれどころじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、女子高生っていう設定そのもが電波様、コラーって感じですが(笑)

男子が大好きな、幼馴染とか、近所のお姉さんとか、委員長とか巻き込みながらの、伝奇的ハーレムモノも面白そうです(笑)