血なんかかよってない
人形と揶揄されたこともある。
そもそも、ニンゲンとして扱われたこともない。
味覚はない。感覚もデータ検知するが、君たちが言うような、触れ合いも温度も、感情すら人工物だ。そうプログラムされたから、その通りに判断する。ただ、それだけのこと――と息をつく。
「遠藤さん!」
ただすれ違っただけで、彼女は無邪気に手を振ってくれる。あの子は、なんて笑顔で笑うんだろう。彼女の隣では、苦虫を潰したような顔で、こちらを睨む少年が一人。
彼の反応が正当というものだ。
俺は、君たちを監視しているというに――君ときたら、まるで頓着しない。
その度にシステムが【エラーを検出】と警告してくれるのが、なんとも五月蝿かった。
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テーマ「人形」参加作品です。
拙作「限りなく水色に近い緋色」より。
本編で、遠藤さんをもっと書きたいのに書けなかったので、作者のエゴで、個人的に満足したのでした。