okazaki3project

オカザキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。時々、自主企画の告知とか。

破滅の王

 

 全ての生きとし生けるものがずっと、憎かった。
 この国は、種族差別の上に成り立つ。龍の血を引いた王族が政を取り仕切り、ヒトが仕える。半獣やドワーフは、ヒト族の下で奴隷として生きることでしか、許されない。

 金脈採掘の過酷な労働環境のもと、家族や同胞が生き絶えていく。
 それでも、ヒト族は奴畜(ドチク)という扱いで、いいように扱われ、家畜のように倒れたら次の奴畜が放たれる。

 そんな時に、金脈の中に眠っていた青真珠に目を奪われた。
 金ではないから、と。ヒト族の監督は目もくれ図、蹴飛ばして――転がった真珠が、俺の足元にわざわざやってくる。

〈ハロー?〉

 青真珠がそう言っている気がした。

〈お前は、俺のことを理解できるんだろ?〉

 そう軽薄な声が、脳裏に響く。
 知らないわけがない。ドワーフ族は、鉱脈の中で、眠る魔力を掘り起こしては、道具に埋め込むのだ。

 だが、ここでは鍛治ができるはずもない。

〈諦めるか?〉

 青真珠がせせら笑うのを尻目に、俺は――青真珠に手を伸ばして――飲み込んだ。
 青真珠は笑う。

〈いいぜ、愉快だ。お前のこと気に入ったよ〉

 手のひらに青真珠が覗かせては消える。

〈本来の錬成をすっ飛ばすんだ。20年待て。そうしたら、あんたの願いを全て叶えよう。あんたの体に定着するまで、な〉

 生きとしいけるものを、全て憎む。それだけのために残りの時間を生きる――。

 

 

 

 

 そのはずだんだったのだが――。
 一つの時代が終わって。
 龍人を王族とし、ヒト族が政を担うそんな時代が終わって――。

 俺は、戦乱の最中捨てられたヒトの乳児を抱いていた。

〈お前はこれで自由だ。とりあえず、この赤ん坊から血祭りにあげるのも一興かもしれんな〉

 青真珠が手のひらから覗く――その青真珠を、俺は乳児の唇に触れさせた。その子は反射的に、吸い付く。

〈バカ、貴様、何をやって――〉

 魔力で、母乳を流してやってくれ。それぐらい、造作ないだろ?
 ニッと俺は笑う。

 魔石は大概にして、嘘つきだ。
 20年も待たなくても、魔力は定着していた。
 それでも、どうでもよかったのだ。
 20年待てば、劫火で焼く。焼き尽くす、それだけを夢見てきたのに。

 一番憎んでいた、ヒト族の赤子なんて、捨てればいいものを。生後一人では生きられない存在だ。ヒト族なんて、こんなにも脆い。オトナになれば、あんなにも狡猾だが。

〈育てるのか?〉

 それもまた、面白いかもしれない。

〈バカだ、お前は。ドワーフの一族を迫害した一族を、しかも王族の――〉

 うるさい。
 とりあえず、お前はオシャブリでいろ。俺は小さく笑みながら、火が回る王都を後にして――。

 どこかの村で鍛冶屋でもするか、そんなことを思いながら。

 

 

 

 

 

※作者注記

奴畜(ドチク)という言葉は現在の日本語にはなく、あくまでこの世界の蔑称として見ていただけたらと。

ただし、調べてみると、農奴としての意味合いで、古典に出ているという表記もあり、インスピレーションで単純に書いて見たにしては、なかなか面白いなぁと個人的に。

 

参考web

ザイモツ【財物】とドチク【奴畜】 | 情報言語学研究室