新世界/君のご飯が食べたい
【新世界】
だいたい目立ちすぎるんだ。
君に苦言を言われるまで、考えもしなかった。それなりに変装をしていたつもりだったが、君曰く、絹を纏う町人がいてたまるか、らしい。
君にコーディネートをしてもらって、町に出る。
王族なんて不便なもので、市井に出ようと思えば、護衛が壁をご丁寧に作ってくれるから、結局何も分からない。
「また難しい顔してるね」
と彼女は野生竜の串焼きを手にする。ナイフとフォークが無い事に戸惑うと、
「こうやって食べるの」
とかぶりつくので、それにならった。
――美味しい。
自分の知らない世界が、すぐ近くに広がっていて。もっと知りたいと思う事は贅沢なんだろうか。この国のことと、君のことを――。
【君のご飯が食べたい】
今時ね、男の人だって、ご飯を作れた方がいいと思うよ。
そう君が言っていたことを、今さら思い出す。
君の料理が一番美味しいからね、と僕は笑った。夫婦は共同作業だから、私だけ料理をするのはオカシイと言うので、僕もしぶしぶ料理を憶えた。
惚れた弱みってヤツだった。
不器用ながら、君のレシピを少しずつ憶えていったんだ。
「美味しいです」
君は言った。
「どなたか、存じませんが」
よかった、と僕は答える。懐かしい感じがしますと君が言う。それだけで充分。君に教えてもらった煮魚だ。できれば、もっと早く作ってあげたらよかった。
――君が僕を忘れてしまう、その前に。
「おいしい」
その言葉があるから、次も頑張れる。
今夜21時開催です。第四十七回のお題は「食べる」です。食事、食べ物等「食」が入った言葉でもOKです。概要→ https://t.co/PJh41DIrmY に沿って今夜21時~24時に #Twitter300字ss と @Tw300ss をつけ投稿して下さい
— Tw300字ss (@Tw300ss) 2018年10月6日
ということで、今回は2編参加です。
いつもの、王子と騎士な女の子と
ぷらすオリジナル。
まぁ、月並みですが。ちょっと僕はそういう仕事をしているので、
つい書きたくなってしまったのでした。
ちらっと読みましたが、他の方の作品も
世界が深く、のめり込む。
最近はなかなか読了ツイートすら残せていないのですが
隙間時間で、また楽しませていただけたらと思います。