猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

乱舞

 モニターから見ていた世界が全てだった。ラボでは全てが管理される。あてがわれた部屋には窓すらなくて。
 繰り返される実験。私の手のひらの上で、煌々と燃える火炎。上手に壊したら、お父さんが喜んでくれた。
 ある日――実験で一緒だった子が、私の手を引いた。その子の手には、液晶タブレット端末が。時々見せてくれた景色に目を奪われて。ココにはない世界が、広がっている気がして――。

 でも私は、そんな世界には行けない。
 そう思っていたんだけどな。
 
 
 
 言葉にならなかった。あの子が私の手を引く。目の前では桃色の花弁が乱舞して。
 でも、それ以上に暖かい手や言葉が、こんなにも溢れる世界があっただなんて。

 

 

 

 

 

 

第52回Twitter300字SS参加作品。

テーマ「咲く」でした。

文字数にして292字。

 

 

ちょっと後書き。

多分、初めてでも読めるように書いたつもりだったのですが、

拙作「限りなく水色に近い緋色」から、宗方ひなたでした。

kakuyomu.jp

 

実験室時代のことをいつか書こうと思いながらいたんですが、

あら、なんか良い風景を書けたきがします。

その反面、やっぱり300字という紫衣源は難しいなぁと思ったり。

それが毎回、楽しくて仕方がないですけどね。

 

今回も参加できてよかったです。あともう1作、参加できたらありがたいなぁ。間に合えば!