もう包み込まれていた
もう少し、自分の時間が欲しい。理由はそれだけだった。彼に不満があるわけでは無い。そもそも私に選択肢は無い。貴族の家に産まれた子女としての覚悟はある。婚姻の意味も理解している。ただ、もう少しあと少しだけ、先生とこの国の古代史を探求したいだけなのだ。その時間が無いことを私は知って――。
「先生?」
私は目を丸くした。この国の第3王子は、学士院の学長であると聞いていた。その王子――目の前で、私の先生が笑顔を浮かべている。
「結婚なんか興味もなかったんだけどね、君となら一緒に歩みたいって思ったんだ。その、ダメかな?」
包み込むような笑顔で。あぁ、と理解した。今さらに。私、目の前の人に恋していたんだ。
1時間後、開催です。第六十一回のお題は「包む」です。比喩的表現、包丁、包帯等、「包」の入る言葉でもOKです。「包む」のある光景を作品にして下さい。概要→ https://t.co/PJh41DIrmY
— Tw300字ss (@Tw300ss) 2020年2月1日
に沿って21時~24時に #Twitter300字ss と @Tw300ss をつけて投稿して下さい
第61回Twitter300字SS参加作品
テーマ「包む」でした。
【298文字】