猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

かき氷の記憶

 

 幼馴染と言うには、語弊がある。なんとなく、駄菓子屋の孫、それぐらいの認識しかない。クラスは一緒になったことがない、その程度の関係だった。
 この駄菓子屋は、夏になるとかき氷を始める。かき氷を彼女と並んで一食べた記憶だけが鮮明で。
 その駄菓子屋も、地震で倒壊したと知ったのは、親しき人の訃報を聞いた後――。
 記憶なんて、淡くて脆くて曖昧で。
 ようやく街に帰ってきた僕は、目を疑った。かつての跡地には「DAGASI⭐︎」と手作りの旗がたち、かき氷器を回す、彼女がいて。
「やっと帰ってきたのか、都会かぶれ。ちょっと手伝え」
 開口一番、口の悪さは健在で。
 ずっと探していたなんて、言ってやらない。

 

 

 

と言うことで、Twitter300字SS参加作品でした。