命の氷
男は氷をノミで削るという作業を繰り返す。雪の女王からようやく下賜された【命の氷】だ。
匠であることの証。芸術をこよなく愛する雪の女王が、本当に認めた匠にしか譲らない。男はその腕で、氷の宮殿を作り上げた。
女王はお喜びだ、と文官はご丁寧に報告をくれたが、それもどうでもいい。
彼女が命を吹き返せば、それは何よりも価値がある。
彼はノミを振るう。彼女の表情を、笑顔を思い返して。
「愚かよのぉ」
雪の女王は、新しい女王の髪を撫でる。氷柱でできた髪は梳くこともできない。美しき造形は命が宿る。だが人の感情が入り込む余地など無い。あるはずが無いのだ。
新しい女王の指先は真紅に滴って――。
今夜21時開催です。第二十九回のお題は「氷」です。氷雨、氷河、氷菓等、様々な「氷」のある光景を作品にして下さい。詳しい概要→ https://t.co/GtCHTLOpLL
— Tw300字ss (@Tw300ss) 2017年2月4日
に沿って21時~24時に #Twitter300字ss のタグをつけて投稿して下さい
こちらもTwitter300字SS参加作品でした!