猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

慟哭

 あの人はきっと私が死んでも涙を流さない。
 感情を流すには、私たちは長く生きすぎた。エルフと龍人、ともに長命の種だ。エルフは自然と共にあり、龍人は本能のままに血を求める。
 惹かれたのは――きっとお互いの同情から。
 彼は失ってばかりで。そして私は奪われて。
 種が違うんだから、愛情なんかあるはずもなく。
 エルフが命を絶つには、汚れた血で煎じれば良い。どんな薬を調合するよりも、安易で。私は一想いに呷った。
 でも、君に会えてよかったと思っているんだよ?

 

 

 慟哭という言葉があるのなら、今がまさにそれで。
 龍人は枯れかけたエルフの躰を抱きしめるが――血で汚れたエルフは、土にも還らず気化して、消え去った。

 

 

 

 

 

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