猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

あなたにあいたい

 

 運命の出会いなんてない。私たちは漫然と日々の生活をこなす。昨日から今日、明日へ淡々とつながる。好きな人ができたら、それはそれでいいけれど、きっとそんな絵に描いたようなトキメキなんかやってこない。無感動のまま、私たちは頁の始まりから、頁の終わりまで、息をして物語が終わる、そのはずだった。
 だった――。
 あなたの指が、頁をなぞった瞬間に。あなたがこの物語を何回も読む姿が、刹那、なぜか私には、見えて――。
 あなたは物語を愛してくれる。私はこの物語の中でしか生きることができない。私はこの物語の中の登場人物の一人しかない。
 でもあなたに逢いたい。そう願い、その願いが二つの世界を壊すだなんて――。