猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

小さい巨人族

 

 のっぽのドワーフ族・チビの巨人族。ウソみたいな組み合わせのコンビだが、依頼達成率はぎるどの中でも一、二を争う。ドワーフはファーニル、サーベルを帯剣し、その容姿はエルフと言われても驚かない。赤黒い皮膚がドワーフであることを証明しているが。


 一方の、巨人族はガルド。武器は一切もたない。探索用にツルハシをリュックサックに下げるのみだ。銀髪に透き通るような肌をしていなければ、ドワーフと言われても驚かないだろう。ただ、その口は悪い。

「てめぇら、いい加減にしろよ」

 と探査隊に向けて、何度目かの愚痴をもらす。経緯はこうだ。貴重な古代鉱石採取の為、ギルド経由で探査体は冒険者を雇った。それがガルドとファーニルなワケだが、探索隊の準備不足で今は道に迷っているというわけだ。

 探索隊は探索隊で、役にも立たない口だけというイメージを先入観に、ガルドに愛想を尽かしていた。度重なって、衝突を繰り返して、今に至る。

「何もしない、お前に言われたくない! 私達の護衛は、ファーニルさんだけでたくさんだ。ガルド、お前はとっとと帰れ――」

 探査中にそんなことを言うのは契約違反だ。目を細めたのは、ファーニルで。

「失礼ですが、ガルドは強いですよ。私がサーベルを振るのは、ガルドに余計な労力をさかせない為。ガルドを解雇するのなら、パーティーである私も解雇することになりますが?」

 緊張感が走る。探査隊はから笑いでごまかし、舌打ちをする。
 と、その音に交じって足音が乾いた足音が響いた。
 からん、からんと。

「騒ぎすぎですね。墓守が私たちを嗅ぎつけたようです」
「そんな呑気に分析しないで、ファーニルさん、助けてください!」
「いえ、この状況を打破できるのは私ではありません。ガルド、お願いしますよ?」
「疲れたら、頼むぞ?」
「もちろんです」

 そう言いながらも、ファーニルも念の為サーベルを抜き放つ。

「ガルド、お前、そんなツルハシで何を――」
「これは探索用だ。戦闘じゃ使わねぇよ」
「こんな時に冗談言っている場合か!」

 もう眼前まで、骸骨達がカチャカチャ骨を鳴らしながら迫ってくる。

「いいから、俺に任せとけ」
「は?」

 言葉を失った。ガルドの右腕が、大きく膨れ上がる。膨張し、そうまるで巨人の右腕のように。

「墓守ごときが、巨人にかなうと思うなよ? 俺は強いぞ」

 不敵な笑みを浮かべ、ガルドはその手を振る。骨が砕け、洞窟内の石壁を抉る。轟音が鳴り響き、地響きにも似た不気味な音が鳴り響く。

「え?」

 狼狽した声と、ガルドの欠伸が重なっった。見れば、すでにその右腕はもとに戻っている。

「まぁ洞窟の中で巨人化したらそうなるよね」
「ファーニル。体は託した」
「ま、それが私の仕事ですからね」

 ファーニルはにっこり微笑んで、ガルドの体をお姫様抱っこする。

「……おまえ、その、抱き方やめろ……って」
「時々、思い出せてあげないと。ガルドは私のモノなんですから」
「うるせぇ……」

 声に力がまるでない。ガルドはもう一回欠伸して――眠ってしまった。探査隊の面々は唖然と、その様を見る。

「いったん避難が良いと思いますよ?」

 ファーニルはそう言い、すでに走り出す。

「え? おい?」
「洞窟内で巨人化しましたから。崩落の危険があります。ただ、どうやら新しい階層につながったようですけどね」

 それが本当なら、研究価値は増すが――。

「今は避難だ、総員、避難!」
 探索隊が全力で駆け出した刹那、背後で岩盤が落ちて、土煙と轟音を巻き上げた。

 

 

 

「また探索隊から依頼がきてるけど、ガルド、どうします? 指名依頼ですよ」


 とファーニルはガルドのカップに紅茶を注ぎながら言う。

「面倒くせぇなぁ」
「信頼はかちとったと思うけどね?」
「それこそ、うぜぇ話しだって」
「変わらないですね」
「あ?」
「ガルドはいつも言いますからね。『俺を信じろ』って」

 とファーニルはニッコリ微笑む。

「でも、私の時は『俺だけを信じろ』でしたね。迫害を受けたドワーフに、なんて物好きなって思いましたよ」
「また、その話かよ」
「えぇ。だって嬉しかったんですよ。私の夢だった巨人に剣を打つ。それが夢物語じゃなくて叶うかもしれない――そう思ったらね」
「それはお前の問題だろ、俺は知らねーよ」

 と言いながら、紅茶に口をつける。

「依頼は、受けとけ。面倒くせぇけど、やってやるよ」
「そうガルドなら言うと思って、もう受けてます。出発は明日、シルフの刻です」
「は?」
「少し早いですけど、私が起こしてあげますから、安心してくださいね」
「早いとか、そんなレベルじゃないだろ、ふざけ――」

 ファーニルとガルドの喧噪が続くのもいつものことで。
 神代の巨人として現世に目覚めた少年と、巨人に剣を打ちたいドワーフの旅は、まだまだ続く。

 

 

 

 

 

診断メーカーからのネタで描き下ろしてみました。

ちょっと少年漫画チック。まさか2000字になるとは思ってなかったけど^^;