猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

微睡み泳ぐ

 

 遺伝子情報の海を微睡みながら、泳いでいく。目的なく最初は泳ぐだけだった。いつか宿主を引きずり下ろす。それだけを思って。一つの肉体に、二つの人格。主たる遺伝子が二つ。衝突しあうのは当然で。
 微睡みながら、泳ぎながら。一人の少年のことを想う。
 宿主にとってかけがえのない存在であるように、自分にとっても不可欠な存在だ。彼の存在が自分達を活かす。宿主のように惚れた好いたで踊るつもりは、毛頭ない。
『また会いたいってことだよ』
 なにを戯言を、と思いながら。あの言葉、彼の表情が絶え間なく流れるのはどうしてか。
 彼を守れない時は宿主を引きずり下ろして、全てを灼き尽くす。
 ――その時がきたようだ。

 

 

 

 

 

300字SS,泳ぐでもう一本参加です。
こちらは拙作「限りなく水色に近い緋色」から【緋色】です。

なかなか出番がないコイツなので、コイツサイドで書いてみたら面白いなって思って書いてみました。

 

今回も参加できてよかったです。
感謝!