猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

君と夢を見ていた。

 ぐちゃぐちゃの机の上で

 また、か。
 半ば呆れながら、徹夜で作業するのは仕方ない。もうコレは諦めた。どうせ姐御は、言っても聞かないし、思いついたが吉日で研究に没頭する。僕は、姐御の研究が心置きなく行えるよう金策をして――そして、商品を売り出す。
 鳴り止まない目覚まし時計を止めて。
 どうせ、こんなモノじゃ姐御は起きない。
 彼女の唇に、自分の唇を重ねて。
 彼女の甘い吐息。本能的に、彼女の唇が僕を探し求めるが――僕はそっと離れる。
 コーヒー豆をミルでゆっくりと曳きながら。
 仄かな香りが立ち込めて。
 自然と、彼女が起き上がるのを待つ。
「ここまで来るなんて正直、思ってなかったよね」
 僕は一人コーヒーを啜りながら、呟く。
 ここまできたのだ。
 竜の鱗、その力を借りて。
 人類が空を飛ぶ。
 ――なんだ、そのため息は。
 彼女の話を聞いたあの時の僕を、誰が責められようか。みんなきっと同じ反応をするはずだ。大それた夢、そう言える。それでも彼女は言い切ったのだ。今は夢でも、いずれ現実になる。お前はずっとポーションを売り続けるか? それとも人類に夢を売り出すか? どっちか選んでみないか?
 なんて人だ、と思いながら。けれど――。
 さすがの彼女も今回は驚くだろう。
 イメージトレーニングをしておく。つい、ニヤニヤしてしまいそうだから。

 

「王国騎士団が空軍設立を創案。その船を全面的に姐御に委託するそうです。報告は以上です――」
 だ、ダメだ。ニヤけた表情筋がおさまらない。
 夢を見ていた。
 人を空に羽ばたかせる、そんな夢を。

 コーヒーの香りに満たされながら。
 彼女はまだ起きない。
 それで良い。起きるまでもう少し――その寝顔が観れるのも僕の特権だ。

 

 

 

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第155回 二代目フリーワンライ企画参加作品。

お題:

「鳴り止まない目覚まし時計」

「机の上はぐちゃぐちゃ」

「大それた夢」

「なんだそのため息は」

「報告は以上です」

 

多分、全てのお題をいれたんじゃないでしょうか。

今回は参加できて良かったです。