キスの日SS「先約」
「今日はキスなんだって」
「そんな相手、いないじゃん」
「お互いなぁ」
クラスの女子がワイワイするのを、ひなたは漫然と聞いていた。いつも何からの記念日があって、みんなそれを話題に、騒いでいる気がする。
キスの日か……。
つい思ってしまう。当然、自分にはそんな相手はいなくて。でも、と思う。
たった一人、思い浮かべてしまう人がいて。
「ひなた、どうした?」
ニッコリ笑って、爽が言う。ひなたは、思わず首を横にブルンブルン振った。
「そうそう、知ってる?」
「え?」
ひなたは、思わず爽を見る。それより早く、爽がひいなたの耳元で囁く。
「今日はキスの日なんだって」
「それは、あ、さっき――」
触れるか。触れないか。内緒話のフリをしながら――。
爽の唇が、ひなたの頬に触れて。
「へ?」
そう思った時には、もう爽は離れていた。
そっと、その頬に手を触れながら。
「先約」
「え?」
「キスの日に便乗して、そういうことするヤツ、いそうでしょ?」
「そんなこと、する人いないし……」
「なら、俺の独占だね」
ニッコリ爽は笑う。ひなたは、自分でどう処理していいか分からず、俯くことしかできなかった。
(((誰も、そんなことできないからー!)))
この一瞬、これまでに無いほどクラスが一致団結した。
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5/23はキスの負に便乗して。
リハビリも兼ねて。
限りなく水色に近い緋色から
ひなた × 爽です。
なんか連載、再開できそうな雰囲気ね。こっちも頑張りたくなってきた。
あ、ちなみに。
これは爽だから許される話で。
意中の子に、いきなりキスしたらいけませんよー(当たり前