猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

うたた寝

 宿主が起きていれば、こちらは眠る。だがずっと寝ている訳ではないので、朦朧とした意識の中で、宿主が泣いているのはよく見ていた。心ない言葉が、宿主を突き刺す。その度に隠れて泣くのが彼女だった。


 何回か、宿主の意識を奪って、妾が灼いてやった。人を愚弄しておいて、泣きわめく。その都度、研究者が出てくるのが面倒だった。また暴走したのかとその度に検査をしようとするので、そいつらも灰にしてやった。


 感情を抑圧することに精一杯だった宿主が変わったのはつい最近のことだ。面倒極まりない。邪魔な輩は、焼き払えば良いのに。この宿主は、とことん面倒な選択をする。

 

「緋色、力をかして?」
 言われるまでもない。

 

 

 

 

 

twitter300字SS 第58回参加作品

テーマ「夢」でした。

【文字数 298字】

 

 

もう一つは、拙作「限りなく水色に近い緋色」から

緋色でした。

彼女サイドの視点は、本編でも何回か書いていたのですが、

300字の中で書くのはなかなか新鮮。

初見の方にも読みやすく、そしてどこか惹かれる感じで読んで頂けたら嬉しいなぁ」と思ったのですが、いかがだったでしょうか?

 

各Twitter300字SS各参加者様の作品とともに

楽しんで頂けたら幸いです。

 

今回も参加できて良かったです。

ありがとうございました。

 

 

※更新後、修正しました。

 

 

ずっと夢見てた

 

 大切なことは全部諦めてきた。働け。そして稼げ。そんな時代にどうして恋を語ることができようか。老いてしまったことなら知っている。だが時々どうしてか、初恋をしていたあの時に何度も戻る。
 この手は、シワクチャなのに。
 あの人は、あの時のままで微笑んでいる。だから私は、今日こそ言ったのだ。あなたが、貴方のことが――


 複雑な気持ちでその姿を見ていた。厳しくて強かったオヤジ。介護士さんを初恋の相手と重ねて、まるで少年のように笑うオヤジに戸惑った。介護士さんは困っただろうが、傷つけまいと振る舞ってくれて、本当に感謝で。
 夢、叶えたんだよな?
 その笑顔と――真反対にその体が冷たくなっていくのがウソみたいで。

 

 

 

twitter300字SS 第58回参加作品

テーマ「夢」でした。

【文字数300字】

 

 

 

現実はこんなにきれいじゃないというお言葉もあるかもしれませんが、

現実は僕の創作よりも感動的なことが多いです。

勿論、苦しいこと、つらいことも溢れていますけど。

 

時に幸せなウソは、

傷つけない本当より大事だったりします。

 

 

とは個人的に、ね。

今回も300字SSに参加できてよかったです。

ありがとうございました。

この時間だけ演じれば

 社交界なんて興味もないが、王家が主催するパーティーとなれば参加しない訳にもいかない。どうせ私みたいな女に声をかける紳士なんているはずが――。
「僕と一曲踊ってくれないかな?」
 声をかけてきたのは王子で。彼曰く、色目を使う淑女に食傷気味らしい。私は精一杯の演技で礼をするが「普通でいいよ」と言う。着飾った言葉は好きじゃない、と。私も良縁なんか期待してないので、「それなら好きにさせてもらうわ」と言うと、むしろ王子は嬉しそうだった。曲が終わって、王子は近衛騎士の元へと戻っていく。騎士の彼女は「ご令嬢に失礼はなかったよね?」と心配してくれたその言葉が聞こえないほど――私の鼓動が止まらないのは、どうして?

 

 

 

 

 

 

 

twitter300字SS参加作品

テーマ「演じる」でした。

いつもの王子様と、騎士の彼女の世界観で。

 

 

実は、もう1本短編を書いたのですが(完全オリジナルですが)、これは今回、見送りで。また投稿サイトの方にアップしようかと。

 

今回も参加できてよかったです。

旅の果の景色を

 旅人が集う交易街の人の多さに驚く君に苦笑する。私達は商人の装いだ。誰が第一王子と、その近衛騎士と思うだろうか。君は、町々の状況を知りたがる。人口、税収、交易からの経済実態。さらに君は交易の中からの、住人や商人、旅人達のリアルな情報を望んだ。
 ――異教徒として征服した原住民との交易が此処では行われている。
 その話しを聞いた時の、君の食いつきようといったら。
 ――それで、どうするの?
 私が聞くと、君は真剣な顔で言う。――贖罪をして、それから国の未来を語りたい。
 君は王子としての生活が窮屈だと言う。でも君は誰も為し得ない旅にもう出ていて。
 君と一緒にこの旅先の景色が見たいと、本気でそう思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

第56回Twitter300字SS参加作品

今回は「旅」でした。

 

色々重ったのですが、

今回は旅に出られないけど

交易街に集う旅人たちを相手に、例の王子と騎士とお話をチョイスしてみました。

この子たちの旅路は書いていて楽しいので、僕も個人的に書いていきたいなと、衝動的に思ってしまいます。本当はあんな旅やこんな旅をと思いましたが、彼らがあまりにイメージの中で鮮烈なので、今回はコレで。

 

今回も参加できてよかったです。他の方の作品も楽しみにしながら、恒例の300字SSを楽しみたいと思っています。

今回もありがとうございました。ということで。

娘さんの偏頭痛

 

どうも、尾岡です。最近、娘さんが、偏頭痛に悩まされておりまして。職場でも色々なアドバイスをもらったり、相方さんと話したりするのですが、なにせ早退してのお迎え要請が多くて。

 

ちなみにうちの夫婦ですが、
尾岡がケアマネジャー
相方さんが、介護施設のスタッフというところもああり、
相方さんに電話連絡しても、サービス提供中なので、出れず。
ケアマネジャーは時間的余裕がある訳ないのですが、どうしても電話が連絡ツールの一つであるので、どうしても出られる環境にある。

 

そんな経緯もあって、どうしても僕が連絡先の一番で、お迎えも僕となってしまうわけですが。


そこらへんは、さておいて。
理解ある職場であることが救いでもありました。

 

痛みってのは難しいもので、
本人は辛いんだけど、
僕はその痛みを共有できなくて。

どこまでの痛みなのか、察してあげることができない。

 

相方さんは、どちらかと言うと偏頭痛持ちですが、
「痛みと付き合うしかないから、学校に行く努力はしなくちゃ」
というスタンス。
まぁ、それもわかるんですけどね。

 

理屈としては分かるんだけど、痛いのは本人だし。授業がうけられないぐらい気分が悪いってなってしまったら、それはどうにもならない。
我慢だけじゃ、どうにもならないトコロもあるよね、ってことで、もし今日も呼び出されたら、脳神経外科を受診しようと、相方さんと話をしてました。

 

そして、呼び出された。
今までで最高新記録じゃない?
8:45だぜ?


あ、でもそれはね。娘さんがそれだけしんどいことの現れであるので、それは仕方が無い。それは仕方が無いんだけど、おぉ、今週、まともにおいら仕事してねぇ。
一刻を争う緊急事態がなくてよかった、と今は思っておきます。

 

お迎え、そして脳神経外科へ連絡。
当日のお役で、MRIは無理なのは承知しているのですが、とりあえず連絡しないと」はじまらな――なんですって?

 

看護師さん「今日の五時で予約ぶちこみましたので、来てください」

 

看護師さん、ステキだぜぇ!
と本当にありがたくて、感謝しかない。
家に帰ったら、少し娘さんが元気。
学校では、あんなに気持ち悪かったのに。

 

過去のエントリーで少し触れたのですが、クラスメートとちょっとイザコザがあって、
控えめにもイジメともとれることを受けた娘さんです。
話しを聞いて、一緒に先生と相談をして――という経緯もあったのでした。
もしかすれと、心因性もあるかなぁ、と思っていたのですが。

 

検査の結果、悪性の腫瘍等はなかったとのこと。

 

先生「この時期から出てくる子が多いんです。対処は薬なんだけど、薬だけじゃダメで、自分の加減で、これは辛いなって時に飲む方がいい。処方で朝、夕と書かれているからといって、朝・夕で飲むのはナンセンスです」

 

頓服だからね。あ、でも娘ちゃんがしんどいからって理由で、朝昼夕で服用させていた。そういえば。

 

先生「飲むことが悪ではないんです。ただ付き合っていくしかないというか。薬依存になっても困るし、胃部症状が出たら飲んだらいけない。この痛みなら耐えられる、でもこの痛みなら飲んでいた方が良い。そこで折り合いをつけていくしかないんで、どういう状況で服用したら痛みが和らいで、楽だったかをノートにつけることをおすすめしますよ」

と。

 

言われていることは、至極もっともで。多分、利用者さんだったら同様の説明はできるんですけど。娘となると、落ち着かないね。6時間あければ良いという問題でも無いし、そもそも吐き気があるというところから、アセスメントすべきでしたが。

いかせん、娘となると冷静じゃいられなくなる僕です(笑)

 


先生「冷やしたり、横になったりすることで楽になる場合もああります。温度の急激な変化もいけないので、温度管理をしてあげてください」

 


話しを聞きながら、娘は落ちたようで。
「薬を飲んだ後に少ししえてから、気持ち悪くなったり吐き気があったから、あれって薬で胃が悪くなっていたのかな?」


デスヨネー。
冷静に考えたら分かる。


でも、冷静じゃないと、こうも見落としてしまうもので。気をつけないと、とも思ったのでした。そういう意味で薬は、気軽に考えたらいけないものだとも思いました。

 

老害ならぬ親害ですな。気をつけます。
ただ心理面、心因性も否めないので、学校にはスクールカウンセラーをお願いする次第。でも先生方も一生懸命考えてくれているので、一緒に相談していこうと思います。


色々な時期、多感な時期だから、
環境も変わって、色々な変化があるんだと思います。
その変化の中で、変わらないものがあって、
その中の一つには
僕らは絶対、彼女の傍にいる。
僕らが、君の味方だよって、メッセージを出すことだなと思っていて。

 

ナニが正解か分からないけど、
やっぱり娘さんと手探りでね
一緒に探すしかないと。
これしかないと。
それしかないんだろうな、と。

そんなことを思っています。

あなたにあいたい

 

 運命の出会いなんてない。私たちは漫然と日々の生活をこなす。昨日から今日、明日へ淡々とつながる。好きな人ができたら、それはそれでいいけれど、きっとそんな絵に描いたようなトキメキなんかやってこない。無感動のまま、私たちは頁の始まりから、頁の終わりまで、息をして物語が終わる、そのはずだった。
 だった――。
 あなたの指が、頁をなぞった瞬間に。あなたがこの物語を何回も読む姿が、刹那、なぜか私には、見えて――。
 あなたは物語を愛してくれる。私はこの物語の中でしか生きることができない。私はこの物語の中の登場人物の一人しかない。
 でもあなたに逢いたい。そう願い、その願いが二つの世界を壊すだなんて――。

 

 

 

君が隣りにいることについて

 

 居心地が良くて。なんだか言葉を交わすだけで、染みこんで。当たり前に言葉を掛け合って。これが気が合うということなんだろうか。
 君が言葉をかけてくれること、それが嬉しくて。もっと言葉が欲しくなる。その感情の意味を考えたこともなかった。
 ――君が、他の子が声をかけるまでは。
 あれ? なんなんだろう、この気持ちは。すごく、苦しくて、妙に辛い。なんでもない日常の風景なのに、君が他の子に笑うのが辛くて、でもまた私に笑ってくれるのは嬉しくて。
 この気持ちはなんなんだろう、と思いながら。また彼の笑顔を見たくて、言葉を考えて、行動に移す。


(お願いだから、早く付き合えよ!)
 周囲の声は、耳に届くはずもなく――。