猫の尻尾亭

尾岡レキが創作の事や読書感想を殴り書きするだけのブログです。アイラブ300字SS!

碧月の再会


 四年に1回、ようやくなのだ。青い月と赤い月が交わって、碧の月になる。この日だけ、妖精と交信ができる。
 昔は見えないもの――って大人たちが、言うモノが見えたのに。今はすっかり見えなくなって。でもあの時交わした言葉も、握ったぬくもりや感覚なら、しっかりと憶えていて。
 淡く、月が照らす。
 境界線を、消していきながら。
 あの子は、少し離れて、笑顔を零す。
 言葉にならない、この瞬間は。
 ヒトと精は交わらない。何度も言われた言葉だ。ヒトとヒトで想いを交わせば、これほど楽なことはないと思うのに。どうしても、君のことが忘れられない。
 碧の月が、消えるまで5時間。
 睡魔に負けないように――そう思いながら、4年ぶりの君を僕は抱きしめた。

 

 今年こそ、言わなくちゃって思ったのに。
 彼に抱きしめられながら、思った。
 ごめん。
 妖精は、実はもうすでにニンゲンの社会に交じりあっていて。
 ヒト社会と同化する法術の開発も盛んで。
 何度も、何度も君の前で、告白をしている女の子がいるのに――それは私なのに――君は気付かないままでいる。
(今はまだ)
 秘密は秘密のままが良い。
 君のことを、いつも少し離れて歩いて、ついて回って。私のことを気付かない君がもどかしくて。でもこうやって、ずっと私を探してくれた君が愛しくて。
 あと、もう少ししたら言おう。
 本当のことを。
 君の近くに、いるんだってことを。
 あと少しだけ、後もう少しだけ。

 

 

 

 

二代目フリーワンライ企画様に初参加!

 

 

使用お題
【四年に一度】
【少し離れて歩く】
【秘密は秘密のままがいい】